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東日本大震災 相続放棄、手続き期間を延長へ

民主党が今月に入って 東日本大震災で死亡した人の遺族が相続を放棄するための検討期間を11月30日まで延長する方針を固めました。今回は、相続の承認・放棄といったお話をします。

相続の承認・放棄

まず、以下の話をするにあたり押さえてほしいポイントが2つあります。それは、

  1. 各相続人は、「自分が相続人になったことを知った時から3ヶ月以内」に、「単純承認・限定承認・相続放棄」のいずれかを家庭裁判所に対して申し立てをしなければならない
  2. 相続人が相続する財産はプラスの財産だけでなく、マイナスの財産もある

ということです。

それでは、本題に入りたいと思います。

①単純承認

単純承認とは、相続人が被相続人(故人)の財産(遺産)をすべて相続することです。

具体的には被相続人の財産についてプラスの財産からマイナスの財産を差し引き、プラスの財産が残るのであれば、余った分だけ相続をし、逆にプラス財産を上回るマイナス財産が存在する場合には、相続人が債務を返済していかなければならなくなります。

②限定承認

限定承認は、条件付の相続と言われます。

具体的には被相続人の財産についてプラスの財産からマイナスの財産を差し引き、プラスの財産が残るのであれば、余った分だけ相続をし、逆にプラス財産を上回るマイナス財産が存在する場合には、借金を背負うことになるため、相続をしないという制度です。一見とても合理的な制度に思えるため、誰もが利用しそうですが、以下に記載する相続の放棄と比べて手続きが非常に煩雑である等の理由があるためあまり利用されていません。

③相続の放棄

相続の放棄とは相続人が被相続人の全ての財産を相続しないというものです。具体的には被相続人の財産についてプラスの財産からマイナスの財産を差し引き、プラスの財産が残っても相続せず、プラス財産を上回るマイナス財産が存在しても債務の負担をしないことを言います。

どれを選択するか?
さて、ここまでお読みになった方で疑問を感じた方もいらっしゃると思います。先程、

1.各相続人は、「自分が相続人になったことを知った時から3ヶ月以内」に、「単純承認・限定承認・相続放棄」のいずれかを家庭裁判所に対して申し立てをしなければならない

と記載しましたが、自ら相続を経験したもしくは身の回りで相続を経験した人がいるが、申し立てなんて話は出てこなかったよと思った方もいらっしゃることかと思われます。

それは、民法のある条文でいったん「申し立てをしなければならない」と規定しておきながら別の条文で「ただし3ヶ月以内に申し立てをしなかった場合は、単純承認したものとみなされる」と但し書きをしているためなのです。上記理由もあって、相続は単純承認のケースが多いです。しかし、それでは話が終わってしまうので、限定承認と相続放棄についてもう少しだけ 触れます。

先程、限定承認は相続の放棄と比べて手続きが非常に煩雑であるためあまり利用されていないといった話をしましたが、この話とも関連する両者の大きな違いがあります。

それは、限定承認は相続人全員で行わなければならないのに対して相続放棄は相続人単独で行えることです。つまり、限定承認が相続人全員で足並みを揃える必要があるのに対し 相続放棄は相続人個々の自由意思で行えるということです。このような違いからも限定承認と比べると相続放棄の方が選択され易くなっているといえます。

いずれにせよ、単純承認・限定承認・相続放棄どれを選ぶかは非常に重要な選択になってきますが、相続放棄について民主党が被災者救済の観点から検討期間を11月30日まで延長する方針を固めたというのが今回のトピックスです。

(細)